フィンランドで森にひたる(ハルティアレイクロッジ滞在記前編)

こんにちは。居心地について考えるライター、とりのささみこです。

前回はちょっと寄り道しましたが、引き続き、今夏訪れたフィンランドの居心地のよさについてこのブログ「居心地研究室」で振り返っていきます。

今回とりあげるのは、ヌークシオ国立公園で過ごした一日のこと。

正直、キャンプやハイキングなどのアウトドア体験にはあまり惹かれないわたし。けれど、フィンランドの森で感じたのは、「生きていてよかった」と思えるほどの居心地のよさ。

長くなったので前後編に分けてアップします。ヌークシオ国立公園やハルティアレイクロッジの滞在を考えている方にも、参考にしてもらえますように。

前座〜日本のフィンランドをたずねる〜

そろそろフィンランドの残り香がうすらいできたので、先日、補充するためにとある場所へ向かった。

北欧の気配を求める日本人が行き着く場所といえば、そう。飯能のメッツァビレッジ&ムーミンバレーパークである。

わたしと夫、それから同じく北欧好きな友人の3人で出かけてきた。

帰国後、8月の時点ですでに「少しでもフィンランドを感じたい……」と惹かれていたものの(恋しくなるまでが早い)、飯能はやはり埼玉で、連日35度超えの天気予報に断念。「この国に熱さからの逃げ場はないのか!」と、歯がみした。

夏が暑すぎたためか、冬の到来も遅めだった今年。秋の深まる11月の終わりは、日中の日差しはポカポカ、夜はひんやりとちょうどいい気候だった。紅葉もきれいで、フィンランドなら晩夏?9月のはじめくらい?と妄想がはかどる。

ムーミンバレーパークではムーミン屋敷やショー、アトラクションも楽しめて満足。2度目だけど、毎回、午後から行くくらいでちょうどいいなぁと思う。

季節イベントでは「モラン」がフィーチャーされていた。ムーミンシリーズに登場する女性の魔物で、かなしい背景をもち、周囲を凍らせてしまうモラン。子どもの頃は、小説版に登場するモランが怖かった。パークではなかなかの愛されキャラになっていて、ちょっとほっこり。

(写真)

帰り道。日の暮れた森の湖畔を歩いていると、冷たい空気がツンと鼻をつついてきた。土のにおいだ、と思ってうんと息を吸った。

フィンランドに行ってから、「自然っていいな」と感じることが増えた。森の中で過ごした、うつくしい一日のおかげだと思う。

ベリー摘みに憧れて…

今回の旅は、北欧専門の旅行代理店「フィンツアー」さんにアレンジをお願いした。

旅程を組むうえで色々と要望を伝えたなか、わたしがどうしてもやりたいと言ったのが、「森のベリー摘み」だ。

美しい北欧の夏。木漏れ日のなか、自分で摘んだベリーを食べる。せっかくならただ森に出かけるだけでなく、そこで暮らすような気持ちを味わってみたい。いつか読んだ童話の主人公みたいに……。

数年前からひそかにあたためていた願望を語ったわたしに、フィンツアーの担当者さんがおすすめしてくれたのが、ヌークシオ国立公園の中にあるハルティア・レイクロッジだった。

ヌークシオ国立公園は、映画『かもめ食堂』にも登場したフィンランド屈指の人気をもつ国立公園で、ヘルシンキ中心部から電車とバスで1時間足らずの距離にある。限られた滞在期間の中でも訪れやすく、広大な敷地の中には湖やトレッキングコースがあり大自然を堪能できる。

そんなヌークシオ国立公園にある、ハルティア・レイク・ロッジ。

https://haltialakelodge.com/ja

ホテル棟とグランピング棟を有する宿泊施設で、サウナも完備。国内ではワーケーションや企業セミナーの滞在場所としても人気だという。

ただ、話を聞いても最初は「なんか違うかもなぁ」という印象だった。

わたしの思い描いていたのはもっと牧歌的で、『たのしいムーミン一家』的な感じというか。”そこで暮らすような気持ち”と言っても、せいぜいちいさな森のはずれにあるおうちをエアビーとして借りる、みたいなイメージを持っていた。

(そこまで大自然じゃなくてもいいんだけど……虫とか苦手だし……)

けれど、見せてもらった施設の写真はとても素敵で。ひとりボンヤリと描いていたイメージよりも、綺麗に摂られた宣材写真のほうがあざやかなのは間違いなく、じわじわと心惹かれていく。

「ここでベリー摘みもできるんですか?」

「はい、多分できるはずですよ」

いや、そこは言い切ってくれよ。

しかしまぁ、他の場所を探すのは大変そうだし、予算的にも見合っている。ないより、隣で聞いている夫が興味を惹かれている様子だ。

フィンランドへの新婚旅行は、彼にとって初海外となる。なのに、旅程にはわたしの希望ばかりを詰め込んで申し訳なく思っていたので、夫が気に入ったそぶりを見せた場所にはぜひ行きたい。

かくしてわたしたちは、ヌークシオ国立公園に一泊滞在することになった。

街から森へ

フィンランドに来て4日目の昼。

それまで泊まっていたホテルヴァークナを離れて、わたしたちはヌークシオへの中継地点・Espoo行きの列車に乗った。

このホテルの朝ごはんがいかに素晴らしかったかは、この記事で書いている。

旅の居心地【フィンランド編(1)”おいしい”を選べて、居心地がいい】

電車旅のお供はこのアイス。

ねっちりと濃厚なチョコレートアイスで、とても美味しい。旅行中はほとんど毎日アイスを食べていた。(なんなら2アイスいった日もある。そりゃ帰国後太ってるはずだ)

Espooについたらバスに乗り換え。旅先での電車とバスの乗り継ぎは、日本でも間違えそうでドキドキする。フィンツアーさんが分かりやすく案内を出してくれていたので助かった。

バスに揺られて数十分、周りの風景はどんどんと木々に包まれていき、ついにわたしたちは森の中へと辿りついた。

燦燦と照る日。ヘルシンキより涼しいだろうと予想していたけれど、むしろ暑いような気がする。青空に浮かぶもくもくの白い雲はソフトクリームのよう。

そして見渡す限り、森、森、森だった。

「ああ夏休みだなぁ」と言いたくなる景色だ。

宿泊するハルティアレイクロッジはバス停からすぐ近く。横の黒板に書かれた「MAYBE BEARS WOULDN'T RISK IT(クマが出るかもね)」の文字は冗談めいているが、果たして?

ハルティアレイクロッジのホテル棟はログハウス風の二階建て。客室は少なく、こぢんまりとした佇まいだ。一階入ってすぐがフロントとラウンジで、外のテラス席でくつろぐひとの姿もあった。

チェックインを受け付けてくれたのは、中年の女性とはたちくらいの女の子。女の子のほうが英語が堪能で、こまごまとした案内をしてくれた。アルバイトの学生さんなのか、それとも家族経営で娘さんが手伝っているんだろうか?

ふたりともにこやかで、穏やかで、せかせかしてない。親しみやすいけど、丁寧。

ひとの感じがいいと、ここは良い場所だな、と思う。

せっかくなので貸切サウナの予約をとって、まずは2階の部屋へ荷物を置きに行った。

森をすぐそばに感じる部屋

部屋の様子はこんな感じ。

ダブルベッドがどん、と真ん中に置かれた、すっきりと清潔感のある部屋。そこまで広くないはずなのに、不思議と開放感がある。窓のすぐ外に森の緑が見えるから?

このハルティアレイクロッジはコンセプトのひとつにサステナビリティを掲げている。

地産地消で資源や食材をまかなう取り組みのほか、部屋の調度品をはじめさまざまな箇所でリサイクル品を使用。わたしたちの部屋のコート掛けは、スキーの板で作られていた。

スーツケースはヘルシンキに置いてきている。翌日にはまたホテルヴァークナに戻る予定のため、1日預かってもらっていたのだ。荷物が最低限なので、スペースを広々と使えて気持ちがいい。

ベランダに出てみると、さわさわと風が森を渡っていくのをすぐ近くに感じられて、もうそれだけですぅーっと癒されるような気がした。

後から気づいたが、ベランダつきの部屋は限られていたのでラッキーだった。

どこまでも透明な湖のきらめき

夕方のサウナまで、まずは森を散策することにした。

もちろんお目当てはベリー摘み。だけど、どこにどんなベリーが生えているんだろう?

とりあえず外へ出てみる。看板によればすぐ近くが湖で、しかも泳げるらしかった。

サウナ用に水着を持ってきてはいるけど、別に部屋まで取りに行かなくてもいいかな。まぁ、見るだけ見てみるか。

軽い気持ちで、水辺へいたる道を下っていく。途中、スナフキンのテントみたいなものがある広場を通った。掲示板の張り紙によれば。ここでキャンプファイアーや野外ライブが行われたりもするらしい。

こんな場所を見て思い出すのは、小学生のときに行かされた校外学習だ。4~6年生がそろって山地に出かけ、縦割り班で合宿をする。正直、あまり好きじゃなかった。

大人数での集団行動も、学校が定めた行程に従わなくちゃいけないのも、細々とルールが決められているのも、みんなみんな窮屈だった。合宿所のトイレは汚いし。毎日野外活動があるので持ち物や靴にどんどん泥や小枝がくっついたり、虫がよく出てくるのも嫌で、とにかく早く帰りたいと思っていた。

今思えば、あれははっきりと「居心地の悪い」時間だった。わたしが自然体験にあまり心躍らない理由のひとつか……と、妙に納得する。

今のところ、ハルティアレイクロッジは好印象であるけれど。森のなかで過ごす1泊2日、どんな時間になるんだろう?

ちょっと急な斜面にびくつきながらも進んでいくと、やがて木立の向こうに人の気配と、キラキラッと輝くものが見えてきた。

そして視界が開けた瞬間、思わず「おお」と声が漏れた。

わたしはこうして思い出を文章にしているけど、本物の前では言葉なんていくら重ねても褪せたものだと思う。

本物の風、本物の空、本物の湖のきらめき。本物の美しさ。

なんて気持ちがいいんだろう。

湖のほとりは砂浜になっており、水着姿のひとが幾人か日光浴をしていた。全身に日の光を受けようと、寝そべるひとの姿もある。

北欧の夏は短い。だからこそ、目いっぱいその恵みを受け止める。旅の前に聞きかじった知識をリアルなものとして目の当たりにする感動と、少しの羨ましさを感じた。

わたしは肌が日光に弱いので、子どもの頃から日の光になるべく当たらないよう、夏場はいつも帽子や日傘を持ち歩いている。近頃は日焼け対策が当たり前になったので、東京には私よりもっと重装備なひとも増えたが。

湖へ近づくと、きらきらと太陽を反射する水面の向こうを、透き通って底まで見通せる。砂も砂利もあるのに、こんなに水がきれいなのはどうして?

日の光は相変わらず暖かいけど、体の中心を、涼しい風が吹き抜けてゆくような気がした。

(わたし、ここに来れてよかったな。)

すこしの間、夫とふたりでただ目の前の景色を眺めていた。それだけで充分だった。

後編へつづく。ベリー摘み、サウナ、そして…

ヌークシオだけで1記事にまとめようと思っていたけど、色々省いて書くのがもったいなかったので、長くなった文章を前後編にわけることにしました。

次回は、いよいよお目当てのベリー摘み体験と、森の中で入ったサウナのこと。

そしてこの旅の中で、いや、今年一年のなかでいちばん「生きていてよかった」と思えた瞬間のことをお話ししたいと思います。

ここまで読んでくれてありがとう!また居心地研究室へ、遊びに来てください。