旅の居心地【2泊3日韓国編①旅は居心地をこわす】
記憶に残らない旅というものはない。
日常を抜け出し、ここじゃないどこかへ行く。特別なことだ。
行先が海外ならば、なおさら。
ただ、この前提をなくしたとしても、2024年春の韓国旅行は、この先も人生規模で印象的なイベントであり続けるだろう。
コロナ禍を経てしばらくぶりの海外渡航だったし、結婚して苗字の変わったパスポートのデビュー戦。
何より、「行って・楽しんで・帰ってくる」を完遂できたことが、こんなにうれしい旅行はこれまでになかった。
出発のほんの数日前まで、わたしのメンタルの調子はどん底で、もうこの世の中に楽しいと思えるものなんてひとつもない気分でいたからだ。
毎日をほがらかにすこやかに過ごすため、”居心地”についての研究をはじめたわたし、とりのささみこ。
この記事を書いている現在、こころに不調を抱えており、心療内科に通院しています。
今回は、そんなさなかで敢行した2泊3日の韓国旅行を振り返りながら、”旅の居心地”について複数回にわたり考えてみます。
正直、旅行はめちゃめちゃ怖かったけど
前置きとして簡単に、旅行時、わたしの調子がどうだったかを書いておく。
4月、晴れて無職の身となったわたしは、第1週の土曜日、グズグズにメンタルを崩した。
道を歩いているだけで理由もなく涙がでる。
家まであと少しのところで急に帰りたくなくなり、真夜中の冷えたベンチにぼけっと座り込む。
突発的な衝動にかられて腕を殴ったりつねったりする。
四六時中悪い状態というわけではない。波はある。大波が来た時のダメージがとにかくデカかった。
世の中にあるものが全て灰色で、何に対しても心が踊らない。

韓国への出発5日前、朝から大波がきた。グチャグチャになった情緒のなかで、「このままじゃ旅行なんてムリ」と強く思った。
間髪をいれず、心療内科の予約をとった。
だって飛行機もホテルも取っちゃってるし!一緒にいく友だちとの約束があるし!
旅に出る、と決めたとき、ウキウキしていた過去の自分をガッカリさせるのも、嫌だ。
幸い、病院にかかった翌日から調子は上向いていった。薬が合っていたらしい。
その上昇気流に乗っかるように大慌てで荷造りを済ませ、わたしは無事、羽田発金浦行の飛行機に搭乗した。

行くことができて、本当にほんとうによかったと思う。
カウンセリングや薬だけではない、旅そのものが、わたしのコンディションによい影響をもたらしてくれた。
旅は居心地をこわす
旅行は、非日常だ。
旅先でふだんと同じ居心地を保つのは難しい。
それがストレスになることもあるだろう。
でも、今回よかった点はまさにそこ。
今のわたしにとって、いつもの暮らしはたぶん、居心地のよいものではない。
そこから離れることが、功を奏したのだと思う。
わるい居心地を、いったんぶっ壊したのだ。

ちなみに心理カウンセラーの方にこのことを話してみたら、心理学的にもメンタルが弱っているときの旅行はおすすめらしい。
「鬱状態にあるひとにお願いしていることが2つあるんです。ひとつはまず、ゆっくり心と体を休めること。ふたつ目は、可能な範囲で動いてみること」
「人間の心にとっては、嫌なこと・負担になることだけじゃなくて、楽しいことや嬉しいことも全部”ストレス”なんです」
ドキドキと早まる鼓動。そわそわ落ち着かない胸騒ぎ。こうした心の反応は、不安や恐怖を抱いたとき、楽しみを前に興奮しているときの両方でおこる。
そして人間の脳はおかしなことに、そのときの心の反応が何からもたらされているものか、判別できないのだそうだ。
有名なのが吊り橋効果。吊り橋を渡っているとき近くにいる人に恋しやすくなるのは、胸のドキドキが不安定な足場への怖さからなのか相手への好意からなのか分からなくなるから。
「だから不安を抱えているとき、あえて楽しい予定を作って。自分に『不安だからじゃない、ワクワクするから胸が騒ぐんだ!』って言い聞かせちゃうんです」
このはなしを、わたしなりの”旅と居心地”への解釈とつなげてみる。
心が弱まっているとき、いまいる場所の居心地がよいかわるいか、分からなくなってしまう。
だから「なんか違うな」「いやだな」という状態を手放すことができない。
そこへ特効薬。自分を、旅という大きなストレスへあえて放り込む。
愉しさと大変さが同居する時間。平坦な日常よりも早いスピードで、たくさんの情報が脳に飛び込んでくる。その目まぐるしさは、ウジウジ悩むような時間を与えてくれない。
物理的な距離をとることで、家に置いてきた日常の窮屈さと散らかり具合に気づくこともある。あ、わたしあの場所にずっといたらダメだったんだと。
旅行はわたしにとって、最適な荒療治だった。

今日のところはここまで。
韓国旅行は2泊3日の短い時間で、わたしにいろいろなことを考えさせてくれた。
次回のテーマは、「旅の居心地を左右するもの」。お楽しみに。







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